ひかげのかずら (日影蔓・日蔭蔓)
学名 |
Lycopodium clavatum(L. japonicum) |
日本名 |
ヒカゲノカズラ |
科名(日本名) |
ヒカゲノカズラ科 |
日本語別名 |
キツネノタスキ、テングノタスキ、カミダスキ、ウサギノタスキ、ヤマウバノタスキ、ヒカゲ、ヤマカズラ(山蔓)、カゲ(蘿) |
漢名 |
石松(セキショウ,shísōng) |
科名(漢名) |
石松(セキショウ,shísōng)科 |
漢語別名 |
伸筋草(シンキンソウ,shēnjīncăo)、金毛獅子草、金腰帶、獅子草 |
英名 |
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2013/08/12 長野県北八ヶ岳(白駒池) |
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辨 |
ヒカゲノカズラ科 Lycopodiaceae(石松 shísōng 科)は、世界に3属 約400種がある。
コスギラン属 Huperzia(石杉屬)
ボウカズラ H. carinata(Lycopodium laxum, Phlegmariurus carinatus;
龍骨馬尾杉) 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
スギラン H. cryptomerina
コウヨウザンカズラ H. cunninghamioides(Lycopodium cunninghamioides)
RedList2020(環境省)では絶滅
ヒモスギラン H. fargesii(Lycopodium fargesii, Phlegmariurus fargesii;
金絲條馬尾杉・馬尾伸筋草) 『全国中草葯匯編』下/53-54
絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
ナンカクラン H. fordii(Lycopodium fordii;福氏馬尾杉) 廣東産
ナガバスギラン H. jejuensis 朝鮮産
ヒメスギラン H. miyoshiana(H.chinensis subsp.miyoshiana;東北石杉)
ヨウラクヒバ H. phlegmaria(Lycopodium phlegmaria;龍胡子) 『全国中草葯匯編』下/84
スギゴケトウゲシバ H. quasipolytrichoides(金發石杉)
ヒメヨウラクヒバ H. salvinioides(Phlegmariurus salvinioides;柔軟馬尾杉)
琉球・臺灣・フィリピン・マラヤ産 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
コスギラン H. selago(H.selago var.appressa, H.arctica, H.appressa,
Lycopodium selago;小杉蘭・小接筋草) 『全国中草葯匯編』下/84
トウゲシバ H. serrata(蛇足石杉) 『(修訂) 中葯志』IV/424
オニトウゲシバ var. longipetiolata(H.javanica;長柄石杉)
チャボトウゲシバ var. myriophyllifolia
ホソバトウゲシバ var. serrrata
ヒロハノトウゲシバ f. intermedia
ヒモラン H. sieboldii(Lycopodium sieboldii, Phlegmariurus sieboldii;
鱗葉馬尾杉)
リュウキュウヒモラン var. christenseniana 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
コスギトウゲシバ H. somae(相馬石杉) 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
ムカデカズラ H. squarrosa(Phlegmariurus squarrosa;粗糙馬尾杉)
ヤチスギラン属 Lycopodiella(小石松屬)
ヒカゲノカズラ属 Lycopodium(石松屬)
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ヒカゲノカズラ属 Lycopodium(石松 shísōng 屬)には、約40種がある。
ミヤマヒカゲノカズラ L. alpinum (Diphasiastrum alpinum;高山石松)
ニイタカヒカゲノカズラ var. transmorrisonense(L.veitchii)
スギカズラ L. annotinum (多穗石松・單穗石松・蔓杉・分筋草・二年石松・杉葉蔓石松)
『(修訂) 中葯志』IV/425 『全国中草葯匯編』下139-140
タカネスギカズラ var. acrifolium(L.neopungens)
ヒロハノスギカズラ var. latifolium
イヌヤチスギラン L. carolinianum 絶滅危惧IA類(CR,環境省RedList2020)
ヒモヅル L. casuarinoides (Lycopodiastrum casuarinoides;
藤子石松・石子藤・舒筋草・伸筋草・木賊葉石松) 『(修訂) 中葯志』IV/424
ミズスギ L. cernuum (Palhinhaea cernua;舗地蜈蚣・垂穗石松・馬鹿角・過山龍・
燈籠草・筋骨草)
『中薬志』Ⅲ/98 『全國中草藥匯編』上/460 『(修訂)中葯志』IV/417-426
ヒメスギラン L. chinense (Huperzia chinensis;中華石杉・中華石松)
L. clavatum (石松・伸筋草・獅子尾)
エゾヒカゲノカズラ var. asiaticum(亞洲石杉) 『(修訂) 中葯志』IV/425
ヒカゲノカズラ var. nipponicum(var.wallichianum, var.aristatum,
L.pseudoclavatum, L.japonicum)
アスヒカズラ L. complanatum (Diphasiastrum complanatum;地刷子石松・扁枝石松・
掃天晴明草・舒筋草)
マンネンスギ L. dendroideum(L.juniperoideum, Dendrolycopodium juniperoideum,
L.verticale, L.obscurum f.strictum;玉柏・玉枝石松・樹状石松・伸筋草)
ナンゴクアスヒカズラ L. multispicatum
L. obscurum(玉柏石杉) 『(修訂) 中葯志』IV/425
L. serratum(蛇足石松・千層塔) 兩廣・貴州・雲南産 『全國中草藥匯編 上』pp.123-124
L. sitchense
タカネヒカゲノカズラ var. nikoense(L.alpinum var.nikoense, L.nikoense)
ニイタカアスヒカズラ L. yueshenense
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シダ植物については、しだを見よ。 |
訓 |
和名ヒカゲノカズラとは、むかし新嘗祭などの神事に、笄の左右に懸けて日影を遮るのに用いたことから。 |
『倭名類聚抄』蘿に、「比加介」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』石松に、「キツネノヲガセ新校正 ヒカゲノカヅラ カミダスキ サガリゴケ新古今栄雅抄 ヒカゲグサ ヤマカヅラ倶ニ同上 キツネノタスキ但州 ヤマウバノタスキ豫州 シゝノネバ土州 キツネノケサ豊前 ハイタロ越前 サルヲガセ テングノタスキ江戸」と。 |
説 |
広く北半球の温帯・暖帯に分布。 |
誌 |
中国では、全草を伸筋草(シンキンソウ,shēnjīncăo)と呼び、胞子を石松子と呼び、それぞれ薬用にする。『中薬志Ⅲ』pp.95-100 『全國中草藥匯編 上』pp.459-460 『(修訂) 中葯志』IV/417-426 |
『古事記』上巻天の石屋戸の伝説に、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天の石屋戸(あめのいはやと)に隠れたとき、天宇受売命(あめのうずめのみこと)は、「天の香山(あまのかぐやま)の日影(ヒカゲノカズラ)を手次(たすき)に懸けて、天の真拆(マサキ)を縵(かづら)と為(し)て、天の香山の小竹葉(ささば)を手草(たぐさ)に結ひて」踊ったという。(『日本書紀』巻1神代上 第7段「天石窟(あまのいわや)」に、ほぼ同様の伝説が載る。) |
『万葉集』に、
あしひきの やまかづらかげ(山蔓蘿) ましばにも
え(得)がたきかげ(蘿)を お(置)きやか(枯)らさむ (14/3573,読人知らず)
足曳の 山縵(やまかづら)の児 今日往くと 吾に告げせば 還り来ましを
足曳の 玉縵の児 今日の如 何(いづれ)の隈(くま)を 見つつ来にけむ
(16/3789;3790, 読人知らず)
見まくほり おも(思)ひしなへに かづら(蔓)かけ
かぐはし君を あひ見つるかも (18/4120,大伴家持)
あしひきの やました(山下)日影 かづら(蘰)ける
うへ(上)にやさらに 梅をしの(賞)はむ (19/4278,大伴家持)
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ときはなる 日かげのかづら けふしこそ 心の色に ふかく見えけれ
(藤原師尹(もろまさ,920-969)「五節の所にて閑院のおほい君(源宗于女)につかはしける」)
清少納言『枕草子』第66段「草は」には「日かげ」などとある。
なお、この日かげは、平安時代になると糸を組んだもので代用するようになった。
藤原道綱母『蜻蛉日記』に、
入道故中将(藤原義懐,1057-1008)、ためまさの朝臣のむすめをわすれたまひけるのち、ひかげのいと、「むすびて」とてたまへりければ、しれにかはりて、
かけてみし すゑもたえにし ひかげくさ
なにによそへて けふむすぶらん |
このひかげについて『雅亮装束抄』に、
かぶりにひかけといふものを左右のみみのうへにさげたり。かぶりのこじのもとに、ひかげのかつらといふものをゆひて、しろきいとのはしなど、ほどからくみなしてあげまきになをむすびさげて、かたかたに四すぢづつかぶりのつのをはさめて、まへにふたすぢ、うしろにふたすぢ、左右にさげたるなり、云々。
(松田『増訂 万葉植物新考』引) |
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